Search Unity

視聴回数が 350 万を上回り、非常な人気を博している『Book of the Dead』。このデモ映像がどのようにして開発されたのか、多くの人が知りたがっています。今回、この映像を制作した Unity のデモチームに直接会い、何が彼らの原動力になっているのか取材するため、Unity のエバンジェリストである Matt Schell がストックホルムに赴きました。本記事は、デモのアート、キャラクター、ライティング、ストーリーテリングなどを掘り下げてご紹介して行く新シリーズの第 1 弾としてお届けします。

今回私が降り立ったストックホルムは晩冬で、景色はまだ雪に覆われています。私はここに、Unity の同僚達がどうやって『Book of the Dead』を作り上げたのか取材するためにやって来ました。私は Unity のエバンジェリストの一人として、頻繁にコミュニティとの交流を行っています。主な役割のひとつは、エンジンの技術や公開予定の新機能、またその使い方について、ユーザーが理解できるようにサポートすることです。今、ちょうど『Book of the Dead』のティザー映像が公開され、様々な質問が大量に寄せられ始めるこのタイミングで、私からコミュニティに共有するための情報を得るべく、デモチームを訪問することにしました。

今回の訪問に先駆けて、私はプロジェクトのリアルタイム・ティザートレイラーを繰り返し観ました。それは、大きな未知の世界を仄めかす、謎めいた作品です。心象に付きまとうような映像は、技術的にも目覚ましく印象的です。あまりにも見事な出来なので、きっと超大規模チームが巨額の資金を投入し、高度にカスタマイズされた Unity で制作したのではないかと多くの人は考えているようです。私はこのような疑問にお答えすべく、内部の特ダネ情報を聞き出そうと意気込んでいます!

デモチームは Unity 外部からも大きな注目を集めています。彼らの作品は複数の賞を受賞しました。昨年『Adam』で受賞した格式高いウェビー賞もそのひとつです。しかし、チームのメンバー達は互いに離れた場所におり、一か所に集まることはほとんどありません。そこで私は、たまたまチーム全員がストックホルムに滞在するという週を選んで訪問し、チーム全員と一緒に時間を過ごして、彼らがどのように連携して仕事をしているのか学ぶことにしました。

チームとの対面

Unity のデモチーム。上段左から、Zdravko Pavlov、Georgi Simeonov、Dominykas Kiauleikis、Julien Heijmans、Krasimir Nechevski、Lasse Jon Fuglsang Pedersen、Malte Hildingsson、Plamen ‘Paco’ Tamnev、Robert Cupisz、Silvia Rasheva、Torbjorn Laedre、Veselin Efremov。

到着後すぐに私に紹介されたのが Veselin Efremov でした。皆は彼のことを Vess と呼んでいます。Vess はデモチームのクリエイティブリーダーで、プロジェクトのビジュアルとナラティブ両方の方向性を決定しています。『Book of the Dead』では脚本制作者、監督、およびアート監督としてクレジットされています。初めて会った時、彼はちょうど Robert Cupisz、Torbjorn Laedre、Julien Heijmans との朝の立ちミーティングへ向かう所でした。彼らはサンフランシスコで開催される Game Developers Conference(GDC)で使うデモの準備中で、PlayStation4 Pro で機動できるようにするために環境アートの見直しを行っている最中でした。

Julien が環境内をナビゲートする横で、Vess が岩を確認しながら同じく電話会議に参加しているテクニカルリードの Torbjorn に尋ねました。「岩がもっと必要だね。4K テクスチャがあと 1 つか 2 つかな?」現在プロジェクトの最適化を担当している Torbjorn は、こう答えました。「いいよ。お返しに何してくれる?」

テクスチャメモリの確保について、またパフォーマンスを維持しながら岩テクスチャの追加が実際に可能かどうかについて、親しみ溢れる論争が繰り広げられます。その後、10 分間を費やして、スカイボックスが正しく方向付けされているかの話し合いとテストを行います。私はこのプロセスを観察しながら、『Book of the Dead』のようなリアルタイム 3D プロジェクトの制作にはどれだけのきめ細かな作業と忍耐が求められるか、改めて認識させられました。

Unity 内部のスタジオ

ミーティング後はチームのプロデューサーである Silvia Rasheva と Vess と一緒に腰を下ろし、彼らが Unity 内でどのように仕事をしているか話を聞きました。

Vess が次はように説明します。「チームのメンバーは 12 人で、それに時々短期契約スタッフが加わります。予算の大部分はメンバーへの給料になります。私達は内部スタジオのような形で機能しています。情報にもアクセス可能で、R&D と密に連絡を取り合って不具合修正の要望や提供を行っていますが、Unity のマシン全体を使って仕事をしている訳ではありません。」

「私達チームと外部スタジオの主な違いは、私達は、将来的に公開予定の未完成の技術を、開発のごく早期の段階から使用していくことです。未完成な訳ですから、これには困難が伴います。ですから私達は、制作を進行すると同時に Unity R&D チームに多数のフィードバックを提供していきます。」

Silvia は次のように付け加えます。「制作全体が、プレアルファ段階の機能を基盤にして行われます。公開可能なレベルに仕上がるまで、絶え間なく更新が繰り返されるそれらの機能をずっと使い続けるので、制作過程は非常に骨の折れるものになります。時には特定の技術的な課題を乗り越えるために何カ月も R&D と協力して取り組むこともあります。チームの半分がプログラマーなのはこのためです。一般的なクリエイティブチームの構成とは異なりますが、私達の場合にはこうする必要があるのです。アート部は、より一般的な構成になっています。デモに含まれるコンセプトアートやキャラクターアート、アセット、シーン、アニメーション、VFX は、6 人のアーティストで作っています。プログラマーのスケジュールの半分以上は R&D との連携に費やされます。

Vess は次のように語ります。「これは、エンジン会社の社内プロダクションチームであることのデメリットのひとつです。エンジンチームは、ゲームを開発する人々からプレッシャーを与えられます。『ちゃんと機能しない、すぐ修正してくれ』と言われます。しかし Unity のように汎用的であることが求められる場合、特定のゲームやスタジオの問題解決だけに集中することができません。私達チームは『私達の目指すところは、こういうものです ― AAA の野望を持った、複雑なシェーダーや大量の頂点、高精度テクスチャなどを使用するようなゲームです」というビジョンを実際に目に見える形に表現します。このため R&D チームは、我々の要望に応えると同時に Unity の開発する多種多様なプロジェクトのニーズを満たすという複雑な課題を、バランスを取りながら行う必要があります。しかし私達デモチームが明白な問題を報告すれば(例えば「これをこうするとシャドウが壊れるの知ってる?」と伝えれば)R&D チームはそれを優先的に解決します。私達のプロジェクトで壊れるのであれば、どのプロジェクトでも壊れることになるからです。」

Unity の限界を押し上げる

オクルージョンプローブについて説明する Robert Cupisz

「これに際してエンジニアリングチームの多大な協力と支援が得られるので、私達は制作を続行することができます」と Silvia は言います。「エンジニアチームにとっても、状況をしっかり把握しながら新技術を検証できることになるので、早期に最大限の改良を行うために役立ちます。私達デモチームは、このような新機能を(ゲームのような)複雑な環境で使用しており、品質基準を徹底的に高く定めています。このため、私達の制作を通して、ずっと見落とされたままになり兼ねない問題を発見することができます。また私達は、まだ誰も手を付けていない技術を常に何かしら必要としているので、ゲーム開発スタジオのように、プロジェクト独自のソリューションの開発も行います。そのプロトタイプを R&D チームに渡し、統合されたエンジン内ソリューションのデザインを開始するきっかけとして役立ててもらうのです。」

こうした共同開発のひとつの例が、オクルージョンプローブです。オクルージョンプローブは『Book of the Dead』のシニアグラフィックスプログラマーである Robert Cupisz がデモ用に開発したものです。オクルージョンプローブとは簡単に言うと、空からオブジェクトに届くライトの量をオブジェクト自体がテストできるようにすることで、シーンのライティングを向上させるものです。オブジェクト同士の遮蔽が起こっている場合のシャドウの表現を、より自然で深みのあるものにすることができます。これを実現するには、ライトのベイキング API へのより深いアクセスが必要でした。R&D 内のライティングチームが Robert の要望に応えて C# スクリプトからのアクセスを可能にしたことで、Unity 2018.1 でこの API が公開となり、全てのユーザーが開発に使用できるようになりました。

デモチームは(その成果を外部のスタジオでも使用可能にするために)無修正版の Unity を使用しながら同時に技術の限界を押し上げることで、かつてなく高い目標を掲げるプロダクションチームのニーズに応えるエンジンの実現に寄与しています。デモチームの開発するプロジェクト固有の技術は慎重に管理され、バージョン 2018.2 で皆様にご利用いただけるように取り組みが進められています。

カスタムの技術について言えば、『Book of the Dead』のテレインについてどんなアプローチをとっているかについても尋ねました。Unity のテレイン機能は長い間更新されておらず、インターネットで見られるコメントのほぼ半分は、どのようなカスタマイゼーションでこれが実現したかのか、という内容だったからです。

私が驚いたのは、『Book of the Dead』では実は既存の Unity テレインを修正なしで使用しており、そこに C# で記述された(地形に配置する物体の)散布と配置を行うカスタムツールを 1 つか 2 つ追加しているだけだということです。Vess は「カスタムテレインを作成するというアイデアは魅力的でしたが、『Book of the Dead』の環境は完全に自然界のものなので、テレインは視聴者が特に注目する部分となります。そこに独自のソリューションを使用したら、誤解を与える結果となります。なので私達は自分達に厳しい要望を課し、Unity デフォルトのテレインでデモを作成することにしたのです。これを行いやすくするツールを Torbjorn が開発しました。これは散布ツールのようなものと、一式の植物をペイントできる(例えば 5 種類のシダを一度にまとめてペイントしたりできる)ツールです。私も手動で各種 Unity ツールを使用して様々なものを配置しました。テレインシステムは古くとも完全なシステムであり、正常に機能します。その上に小さな要素を乗せることで見た目が完全に変わります。単純に、作成とシェーディングをより便利に行えるようにするものです。」

また、草についても質問しました。草はこのデモで私の最も好きな要素のひとつだからです。「Unity の草はライティングに対応していないんです。草はビルボードで、シェーダーや法線マップを持てず、マテリアルを全く制御できません。ですから草は木として配置するんです。小さな木として。」

Unity の可能性を目に見せて示す

2 日間のストックホルム滞在中、チームとの会話から常に感じ取れたのは、Unity でどんなことが可能かを目に見せて示したいという思いです。「それが私達の目標です。可能性を見せること。私達のターゲットは個人ではなく、10~15 人の小規模チームです。グラフィックスプログラマーが 1 人いれば『Book of the Dead』と同程度のクオリティのプロジェクトは開発可能だと思います」と Vess は言います。

2018 年に『Book of the Dead』でウェビー賞を受賞した Veselin

「Unity は、高度なユーザーが使用すれば非常に強力なツールとなります。拡張可能で柔軟で、常に様々な形で進化を続けています。私達の役目のひとつは、人々に「Unity でまだ誰も実現していない事は何ですか?」と聞いて回ることです。次にどんなデモを作成するかの決定材料にもなります。そして、それを実際に試みます。最初は不可能、あるいは少なくとも非常に困難に思えるものです。ですからデモの開発を進め、R&D と協力しながら、その実現に向かって取り組んで行きます。Unity は目を見張る速さで進化していますが、私達チームは常にその一歩先を行くことを目指しています。デモが完成する頃には技術も追い付いて来ており、最終的により改良された製品をユーザーに届けることができます。言ってみれば、これが私達の役割です。」

本シリーズの次回の投稿も、お見逃しなく。次回は Georgi Simeonov がコンセプトアートについてご紹介します。その次の回は Plamen Tamnev がキャラクターアートの制作プロセスについてお話します。その後も、続々とお届けしてまいります。

6 月 19 日から開催される Unite Berlin では『Book of the Dead』の環境をご自分で探検していただける試遊台をご用意しています。また Julien Heijmans がデモの環境アートに関するプレゼンテーションを行います。完全なスケジュールはこちらでご覧ください(英語)。

『Book of the Dead』に関する詳細はこちらでご覧ください。

コメント受付を終了しました。

  1. Ali Mohammadlo

    6月 21, 2018 4:27 pm

    hello i am need help please qustions me i am need to add volumetri lights in Hd render pipline
    how to do this adding ?

  2. AntonioModer

    5月 25, 2018 4:56 pm

    Realtime demo, sources assets from demo ?
    It will be awesome !
    Thanks :)

  3. aisen.daryn

    5月 25, 2018 1:56 pm

    i hope to see an sample scene of this work :]
    lighting, shading and postpro setup …

  4. Matthew McDonald

    5月 25, 2018 1:26 pm

    “I’m surprised to learn that Book of the Dead actually uses the existing Unity terrain without modification”
    HDRP doesn’t have a supported terrain shader – so currently customers can’t use HDRP with terrain (and in fact, I can’t bring our project over to test it as a consequence).

    Interesting read, though – some great solutions to problems!