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プロシージャルな植生生成で自然を見事に描き出す、新人のアセットパブリッシャー

2018年8月1日 カテゴリ: ゲーム | 6 分 で読めます
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Lennart Johansen 氏は 3D ビジュアライゼーションとマッピングシステムのエキスパートであり、無数のゲームとビジュアル体験向けに、プロシージャルな植生生成とランタイムマスキングの導入について、400 を超える開発者を支援しています。彼にとって空き時間でやっていた趣味だったものが思いがけずフルタイムの仕事となり、さらにその仕事を大きく育てるクールな計画も描くまでになりました。

ノルウェー北部に拠点を構え、軍と民間向けの複雑なシステムを構築してきた Lennart Johansen 氏は、厳しい自然環境のことを熟知しています。これまで関わったシステムの中には探索・救助活動にも使われたものもあります。それらのシステム開発は彼が Unity を使いだす前に行われたものですが、その開発中に彼が出会った課題は、現在 Unity を使う開発者が直面する課題と相通じるところがあります。

「私たちはマッピングシステムを作るときに出会う問題と似た種類の問題を多数解決しなければなりませんでいた。マッピングシステムを開発するときは、実世界データをルールセットや生成システムに使ってきましたからね。」

「私たちはみんな、自分の中にゲームが埋め込まれている」

Johansen 氏は自身の最初の Unity プロジェクトにそれまで苦労して積み上げてきた経験を注ぎ込みました。そのプロジェクトは VR 作品でした。「私たちはみんな、自分の中にゲームが埋め込まれていて、それが現実のものになるのを待っているんだと強く信じています。ですから、私が自分のプロジェクトを始めるのは時間と環境の問題でしかなく、そうして始めたプロジェクトが気が付けば Vegetation Studio として形を成していたのです。」

しかし、なぜ彼は Unity で作ろうとしたのでしょうか。

「2、3 年前に私がその VR ゲームのプロジェクトを始めたときに、私が Unity を選んだのにはいくつもの理由がありました。新しいハードウェアを素早くサポートするということも理由のひとつでした。」

しかし、Johansen 氏が Unity を使おうと思った一番の理由は、実は技術面ではなく人材面のほうにありました。「私が Unity を選んだ大きな理由は、Unity コミュニティの強さと豊富な製品が揃ったアセットストアでした。限られたリソースしか持たない小さなチームにとって、こうした事がプロジェクトを立ち上げるにあたって大きな助けとなります。」

Vegetation Studio で作られた、フラットな質感を表現するシェーディングが施されたスタイリッシュなシーン

ゲーム開発の成果を資産に変える

Johansen 氏が初めて公開したアセットとなった Vegetation Studio のアイデアはどこから出てきたのでしょうか。

「自分たちの VR ゲームの開発に取り組んでいるうちに、プレイヤーに大きなエリアの上で複雑な屋外のシーンと植生生成ができるレベルエディターを使わせたいと考えたのです。そして機能のプロトタイピングが終わったとき、他の開発者がゲームを作るときにも使ってもらえるものができたと思いました。アセットストアでカバーされていなかった隙間の部分を埋めたいという考えもあり、このレベルエディターを製品として発表することに決めたのです。」

さらに深い洞察を得るために、Johansen 氏は原点、つまり自然そのものに立ち返ることもしました。

「他の入手可能なツールを評価して、私は確かにそれらのツールは個別にオブジェクトを配置できたり、ブラシ機能で一度に配置できたりするけれど、現実の植生はそれが生育できる場所ならどこにでも生えているものだと思いました。この考えが、ルールベースのプロシージャルな植生生成と、道路や構造物に対するランタイムのマスキングシステムを備えるという、それまでのツールと違ったアプローチを取る動機付けになりました。私たちのアイデアは、例えば、家のプレハブを地形にドラッグアンドドロップするとき、植生を制御するために必要なマスキング情報をプレハブが持てるようにしようというものでした。」

ルールベースの植生生成に使う家屋のマスキング

ユーザーは既存の木や植物、草などのオブジェクトを使ってルールベースの植生生成をシーン全体あるいはゲーム全体に適用します。そのあとにアーティストが手作業で最後の仕上げを施すこともあります。楽しいゲームに使う素晴らしい外観の環境の構築において開発者を支援し、彼ら彼女らが悩むことなく過ごせるようにすることが、Johansen 氏の動機付けの大きな部分を占めます。

「私は自分のアセットのユーザーに、もっとゲームのコンテンツや機能面に時間を費やしてほしいと考えています。例えば、最適化されたレンダーループを構築する難しい課題を解決するためにあまり時間をかけてほしいとは思いません...その部分はすでに私たちが解決済みだと思っていますからね。」

行く手を阻む問題

Awesome Technologies はアセットのパブリッシャーとしては新参者であったが故に、ユーザーやユースケースについて学ぶところも多かったといいます。「私たちにとって最大の課題のひとつは、ユーザーのツールに関するワークフロー、それと開発者が様々なシステムをどのように使い、組み合わせるか。これらを理解することです。ユーザーが私たちが開発を始めたときに想定していた形でアセットを使うことはまずないことを目にしたときは驚きました。」

もうひとつ、Johansen 氏が予想していなかったことは、数百、もしかすると数千もの地形を読み込んでプレイヤーが動き回れる、大きなゲーム世界を持つプロジェクトを進めている開発者が相当数いるということでした。そのため、ワークフローやユースケースの多様さは膨大となり、Johansen 氏にとって、どのような種類のワークフローでも問題なく動作する柔軟性を備えたツールキットを開発・サポートして、ユーザーがプロジェクトで必要としているパーツを実現できるようにしていくことが大きな課題のひとつとなりました。

Johansen 氏にとってさらに大きな課題は Unity 自体の低レベルアクセスでした。「以前は、ゲームエンジンはブラックボックスの色合いが強く、API レベルの制御をもっと行いたいとよく思ったものでした。幸いなことに現在はパッケージマネージャーが導入されたことで状況はかなり改善されているように見えますし、C# に移植されるコードも増えています。『舞台裏』で何が起きているかを把握して、モジュールを拡張することは以前より簡単になっていると思います。」

原始針葉樹林の奥深く

いつも辛いことばかりではない

Johansen 氏が Unity を使い始めたときに期待した通り、熱心なユーザーコミュニティは大いに彼を助けてくれました。「ベータ版から正式リリースまで通じて、ユーザーからのフィードバックはとても素晴らしいものでした。あらゆるレベルから多くの開発者が集まってきましたが皆が協力的で、とても価値のあるコメント、情報、アドバイスをもらいました。非常に感謝しています。」

そして現在、Vegetation Studio はインディーゲームの現場から様々なスタジオでの大規模シミュレーションの開発まで場所を問わずに使われています。現在開発中のゲームの大多数において Awesome のプロシージャルな植生生成を使った風景描写が行われており、すでにアーリーアクセスの受付やリリースを間近に控える段階に至ったものもあります。

アセットストアについて、Johansen 氏はこれまで受け取ってきた支援やフィードバックにより、新人のパブリッシャーが「直接販売していたら到達しえなかった巨大な市場にリーチさせてくれた」ことに感謝しています。

草の生い茂る山の渓谷に向かって下りていく、雪に覆われた坂道

植生生成は成長産業

Johansen 氏は自分の時間のおよそ 20% を、ベースとなるアセットへのサポート提供や機能追加に費やす一方、植生生成に関連する他のプロジェクトを数多く立ち上げています。その中には地形のシャドウシステムや、Vegetation Studio Professional も含まれます。Vegetation Studio Professional は既存の Vegetation Studio ユーザーを対象にベータ版が公開されています

Unity にC# Job System と Burst コンパイラーが導入されたことを受け、Johansen 氏はランタイムでのプロシージャルな植生生成の可能性を見出しました。この検討が実行に移され、近日公開予定の Pro バージョンに向けて、Awesome は Vegetation Studio のコア機能の C# Job System を使った再実装を完了し、マルチスレッドに対応した植物のインスタンス生成とレンダリング準備を実現しました。

今年中に公開予定のブログ記事で、Awesome から Vegetation Studio に C# Job System と Burst コンパイラーを導入した際の知見が共有されます。

複数のバイオームを横断

最後に新機能について触れておくと、Johansen 氏と Awesome のクルーはメッシュ地形のサポートと複数のバイオーム(砂漠・草原・熱帯雨林・ツンドラなど、異なる地域や環境)を再現する機能を追加しています。

「この機能は、開発者が植生と地形のスプラットマップに対応する複数のルールセットを作成し、ユーザーが定義した領域にルールセットを適用できるようにするものです。この機能を使えば、たとえば砂漠の中のオアシスや、雪に覆われた山のふもとに広がる緑深い森を簡単に作ることができます。ユーザーは複数の地形やメッシュをまたいで、多数の環境を組み合わせたりブレンドしたりすることもできるようになります。」

Vegetation Studio のようなアセットで精密に調整すると、草木はより鮮やかな緑色に見えます。ぜひそこに行ってみたいという景色ができあがります。

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2018年8月1日 カテゴリ: ゲーム | 6 分 で読めます

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