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AR にデヴィッド・ボウイが登場 ― Planeta 制作、Unity 製のキラーアプリ

, 3月 26, 2019

『David Bowie is』は、サウンドとメディアに重点を置く制作スタジオ Planeta が制作したアプリケーションです。Planeta は Unity を使用して、もともと美術館向けの展示作品を、高解像度キャプチャー画像と没入型設定をフィーチャーして AR 向けに適応させました。本記事では、クリエイティブ面・技術面において Planeta が直面した一部の課題について、同社にお話を伺っていきます。

2016 年にデヴィッド・ボウイが他界したことで、音楽界は、真に創造的なアーティストを一人失いました。ボウイは単なるアイコニックなポップスターではなく、次々とステージ上の新しい人格を創造し、音楽スタイルやジャンルを自由に行き来しながら常に自身を生まれ変わらせ続ける、真のアーティストであり革新者でした。デヴィッド・ボウイは その 40 年にわたるキャリアを通して、世界の文化に大きな影響を与えました。

ボウイは、技術とそれが人類の体験に及ぼす影響に非常に強い関心を持っていました。アポロの月面着陸以前にリリースされたボウイ初の大ヒット作品『Space Oddity』は、故郷を恋しく思う、気まぐれな宇宙飛行士を題材にした歌です。『TVC15』は「ホログラムのような」映像配信で人々を中毒にするテレビについて警告を鳴らした歌ですが、これはレイア姫が卓上に投影された 1 年も前の 1976 年にリリースされたものです。またインターネット・ブームの初期に、ボウイはウェブに潜在する破壊的な性質を見抜き、独自の AOL 型 ISP「BowieNet」を開始して自身のファンのコミュニティーに提供しました。

デヴィッド・ボウイというアーティストがまだ在世中に彼を称えた展示作品『David Bowie is』は、2013 年にロンドンのビクトリア・アンド・アルバート博物館を封切りに 5 年間世界を巡回しました。ツアーが終盤に差し掛かる頃、ソニーミュージックのリーダー達は、この作品の本質的な要素、そしてボウイの伝説を、どうしたら XR で保存できるかを考え始めました。そして、AR 体験の制作を実現してくれることになる Planeta のチームに出会いました。

この結果完成したのがアプリ『David Bowie is』です。博物館向けの展示を拡張現実で制作し直したこの作品には、何時間にも及ぶボウイの音楽とパフォーマンスのオーディオや動画、そして展示物の 2D・3D 表現がフィーチャーされています。このアプリは Unity を使って、まず iOS 向けに Unity の ARKit サポートを使用して制作され、その後 Android 向けに AR Foundation を使用して制作されました ― そして 2019 年 1 月 8 日、ボウイの、存命であれば 72 歳の誕生日に公開されました。素晴らしい内容のアプリです。私はボウイの大ファンですが、彼が生きていれば、きっとこの作品に大満足しているはずだと思います。

私は最近、Planeta のメンバーである Nick Dangerfield 氏、Jimi Stine 氏、Dan Brewster 氏、Pilar Aranda 氏と、このプロジェクトについてのお話を伺う機会を得ました。

Planeta でこのプロジェクトを行うことになった経緯は?

株式会社ソニー・ミュージック・エンタテインメントの小沢暁子氏はデヴィッド・ボウイの大ファンで、ビクトリア・アンド・アルバート博物館での展覧会に非常に感銘を受けました。彼女は 2 年前に『David Bowie is』を東京に招致しました。昨年、同巡回展の最後の展覧会がブルックリンで開催された際に小沢氏は、この展覧会の完全な複製を XR で後世に残すべきだと考えました。そこで彼女は、協力してくれるスタジオを探し始めました。そして、主に音楽とビジュアルアートを中心に没入型技術に取り組んでいる弊社が、このタスクに適任であると考えたのです。

技術およびクリエイティブ面で、このプロジェクトにおける最も大きな課題は何でしたか?

プロジェクト始動当初の最大の課題は、様々な疑問への答えを見付けることでした。モバイル AR ギャラリーとはどんなものなのか?どのようにギャラリー内を進んで行くのか? 私達にとって、バーチャルアートギャラリーの制作は初の経験ではありませんでした。2016 年から 7 つの VR ギャラリー(展示スペース)を制作してきたからです。しかし、これを小さな画面向けに、媒体の異なる 400 個のオブジェクトを組み込んだ形で行うためには、何日も何日も話し合いを重ねてデザインを模索しなければなりませんでした。技術面での主な課題は、大量のアセットデータに関するものでした。様々なオブジェクトを最もまとまりのある美しい形で表示する方法を考え出すことも課題でしたが、それを円滑にシームレスに行うこと自体が困難なことでした。この意味において、デザインが技術の制約を受けていたと言えます。つまり、モバイル AR で可能な表現には限界があるということです。全てのアイテムが正しい説明とタイトルに適切にタグ付けされるようにするための試行錯誤にも長期間を要しました。

Unity によって簡略化されたプロセスや、解決された問題を教えてください。特定の Unity 機能を活用しましたか?

AR Foundation 経由での AR 統合は、プロジェクトをスムースに開始させるに当たって非常に役立ちました。Unity エディターはツールとしての柔軟性を備えているため、特定のワークフローの作成が非常に行いやすく、大幅に時間を節約することができました。またアセットストアのエコシステムも時間の節約に貢献しました ― 様々なツールやビジュアルエフェクトを自分達で作成するとなると限られたリソースを大幅に浪費することになりますが、それらをストアで購入することができたからです。

この作品と、皆さんの活動に影響を与えたアーティストやクリエイターを教えてください。

陳腐に聞こえてしまうかも知れませんが、私達を導いてくれた光は、デヴィッド・ボウイと、彼の与えた感動の数々 ― つまり、20世紀に創られた最高のアートです。デヴィッド・ボウイは非常に研ぎ澄まされた審美眼を持っていましたが、このプロジェクトの魅力のひとつは、バウハウスからブライアン・イーノまで、この時代の最も影響力があるアーティスト達の一部に改めてスポットライトを当てていることです。

このプロジェクトと類似した記録型の AR プロジェクトに取り組もうとする人たちにアドバイスがあればお願いします。

『David Bowie is』は、記録としてよりも、大規模な展覧会をモバイル向けに再制作した作品であることに重きを置いています。しかしそれを踏まえた上でも、展示品をできるだけ高い品質でキャプチャーすることは非常に重要です。私達がこのプロジェクト用に作成した画像は、メトロポリタン美術館で美術作品の記録用撮影を行うフォトグラファーよって撮影されたものです。

未来のギャラリーについて言えば、「私達はもう従来の美術館・博物館の建築による制約を受けない」ということを理解すべきでしょう。美術館・博物館における体験をそのまま再現しようとするプロジェクトが多いのは当然のことですが、私達の考えでは、架空の空間を作成し、標準的に確立されている一部の表現手法のみを用いてユーザーが親しみやすい体験を作ったほうが、プロジェクトはより成功します。サウンドやライトを多様に駆使すれば、アート鑑賞に最適な(あるいは面白味のある)雰囲気をつくり出すことができます。白熱灯に照らされたありきたりな白壁の箱型空間に縛られる必要がどこにあるでしょうか?

モバイル AR で非常に質の高いレンダリングを実現されていますが、大量のオブジェクトのスキャン画像をどのように最適化したのですか?どのフォトグラメトリソフトウェアを使用しましたか?

このプロジェクトで最も労力を要したのはモデルです。各衣裳(5 日間で 50 着の衣装をキャプチャーしました!)の撮影とスキャン後に、Agisoft Photoscan と Maya を併用して全てのデータをまとめました。その後の仕上げは全て手作業で行われ、完成したのは公開のわずか数日前でした。

アセットの最適化に当たっては、膨大な量のバランス調整とプレイテストを行ってパフォーマンスとユーザビリティを確認しました。最終的に、大部分においては、シーンでは低ポリゴンのモデルを表示し、選択された後に解像度を上げることに決定しました。同様に、全てのモデルに関して、選択後はライティングデータ無しで表示することで、フォトグラメトリデータにキャプチャーされた詳細が存分に鑑賞できるようになっています。

私は、各シーンがパススルーカメラのレンダリングから始まって黒にフェードアウトする所がとても気に入っています。これによって美術館にいるような感覚になります。これは純粋にビジュアル表現として採用したものでしょうか?それともパフォーマンスの最適化に関連した選択だったのでしょうか?

黒へのフェードは純粋にビジュアル表現として採用したものです。私達は開発期間中を通して、背景の透明度を様々に変えて繰り返し試しました。一時は、背景の透明度をユーザーが自由に調整できるスライダーを導入する方向で決まりかけましたが、最終的には、注意をアセットだけに引き付けるために背景は黒にすることに決定しました。表示されるカメラの要素が多すぎると、現実空間とバーチャル空間が混同されます。通常は、そのような境界の曖昧さが AR の魅力のひとつであると捉えられますが、まるで美術館のように没入感のある質の高い体験を実現するには、ビジュアルは全て制作者側で完全にコントロールする必要があると私達は考えました。

完成作品に満足していますか?また、本作品に関連する今後の計画はありますか?

限られた短い期間(開始から終了まで約 6 か月間)での制作でしたが、結果には非常に満足しています。もちろん実現できなかった機能もありますが、それらを実装するには単純に時間が足りませんでした。現段階では『David Bowie is』に関連した今後の計画はありません。

Planeta の次のプロジェクトについてお聞かせください。

次のデジタルプロジェクトは、当社のこれまでの「新しいタイプの空間」の制作経験をさらに展開させ、より従来型のアートを展示するものになります。過去の作品から学んだことを活かし、アーティストや団体と協力して、新しい文化的なイベントスペースをバーチャルリアリティーで制作したいと考えています。このプロジェクトは、常設展示と特設展示の両方が含まれたマルチプレイヤー環境で、建築、サウンドデザイン、ライティングの分野で非常に秀でた才能を持つ方々と協力してデザインされる予定です。

3 replies on “AR にデヴィッド・ボウイが登場 ― Planeta 制作、Unity 製のキラーアプリ”

There are, of course, features we would have loved to include, but there just wasn’t the time to implement them. As of right now, we don’t have any plans to continue working on David Bowie is.

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