ソースファイルをいじらずにアニメーションアセットの調整をその場で行う方法や、2、3 回クリックするだけで次のプロジェクトのコンセプトアートのモックアップを作る方法を知りたくありませんか?Unity のテクニカルアーティスト Victor Kam が、ArtEngine を使ってこのようなワークフローを簡単かつ素早く立ち上げる方法をご紹介します。
公開されているライブラリから構築済みのアニメーションアセットを使って仕事をしていると、ソースファイルがないためにキャラクターや小道具のマテリアルを簡単に調整できず、イライラしたことはありませんか。新しいアニメーションプロジェクトの「雰囲気」が頭の中にあるのに、ムードボードやプリビズで使うモックアップを作ろうとして、頭の中のものをなかなか形に出来ずに苦労したことはありませんか。
これらのシナリオが身近に感じられるなら、Unity ArtEngine がお役に立てるかもしれません。ArtEngine を使えば、これらのワークフローが簡単になるだけでなく、信じられないほど速くなります。サンプルベースのワークフローの考え方に基づいて構築されたこのツールは、データと人間の意図を入力とし、AI を使用して目標とする求める結果に合う出力を素早く生成し、マテリアル作成、ビジュアルの検討、その他、アートに関する作業など、アート制作に関わるプロセスを大幅に高速化します。
今年初めて開催された Unity「Media and Entertainment Digital Developer Day」では 20 分間のデモを行い、その中で映像制作やアニメーションの分野で活躍するリアルタイムコンテンツのクリエイターに向けて、ArtEngine がどのように新しいワークフローを実現し、かつどれほど手作業を削減してくれるかを紹介しました。
下の動画をご覧いただくか、短く要約した本記事のこの後の部分をお読みください。
例として、Unity アセットストアで無料でダウンロードできる『Realtime Rascals』アニメーションプロジェクトのキャラクター、Shanks を考えてみましょう。Shanks のモデルは完全にアンラップされていて、テクスチャも貼られています。これは素晴らしいことですが、将来使用するマテリアルの別バージョンを作成したいとしたらどうすればいいでしょうか。従来のツールでは、この作業は時間のかかる手作業になります。ArtEngine を使えば、一瞬で完了させることが可能です。
テクスチャを ArtEngine に読み込んだ後、Mask Paint ノードを追加します。ブラシを使って、残したい部分に対応する部分を大まかにペイントします。この Mask Paint ノードを Invert ノードに接続し、Invert ノードを新しく作った Seam Removal ノードの Ignore 入力に接続します。これで、定義した領域を使ってマテリアルの再計算を行い、元のソースからすべてのチャンネルを持ってきて、完全なタイリング可能なマテリアルに作り替えることができます。
修正を加えた Shanks のカエル肌のマテリアルは非常に滑らかで、別のモデルに(おそらくに彼の親友の Sydney のモデルに)そのまま適用することもできます。
Shanks に新しいシャツを作ってあげたいと思ったらどうすればいいでしょうか。
衣類のマテリアルを扱ったことのある方なら、ソース画像から特定のパターンを抽出してタイリング可能な素材を作ろうとすると、非常に頭を悩ませる羽目になることはご存じでしょう。これは、画像が正方形でない場合には、さらに困難な作業となります。これは、実物から取ったサンプルを扱う場合によく起きることです。ArtEngine の Mutation Structure ノードは、優れた AI パターン認識を使うことで、ユーザーから最小限の入力を受け取るだけで、画像を分析し、パターンを検出して、指定されたサイズのタイリング可能な素材を瞬く間に作成することができます。
ソースは、お気に入りのシャツをスマートフォンで撮影した写真や、インターネット上に公開されているライブラリなどから取ったテクスチャなど、簡単なもので構いません。ここでは、Unity のアーティストがスキャンした茶色のチェック柄の画像を使用しています。残念ながら、この素材はシームレスではなく、Unity に適したサイズでもありません(テクスチャは各辺 2 の累乗ピクセルのサイズであることが望ましい)。Mutation Structure ノードを使えば、ArtEngine 内でこの 2 つの問題に素早く対処することができます。
まず、マテリアルを Mutation Structure ノードに接続します。「Auto Definition」を選択するか、正方形のウィジェットを使って手動でパターンを定義します。手動で領域を定義して「Neural Match」を選択すると、より高い精度で領域を定義することができます。そして、解像度を指定して実行すると、マテリアルが完全にシームレスになり、別のモデルに適用できるようになります。
Mutation Structure が機能するためには、ソース画像に識別可能な繰り返し単位が 3~4 個含まれている必要があることを覚えておいてください。このノードの詳細については、ArtEngine ナレッジベースの Mutation Structure のページをご覧ください。
試しに、ここまで作り方を紹介した 2 つのマテリアルを Sydney に適用してみましょう。
...マテリアルを適用して Sydney が最高にかっこよくなったかはともかく、別のプロジェクトで使える 2 つのタイリング可能なマテリアルを、わずか数分で手に入れられることは確かです。
ここまではキャラクターを使って使い方をご紹介してきましたが、ストーリーを盛り上げるための環境アセットのことも忘れてはいけません。
アニメーション制作のプロジェクトでは、ムードボードを作成してゴーサインを出すときも、プリプロダクションでより洗練されたルックデブやプレビジュアライゼーションを作成するときも、視覚的に見て検討を重ねることが重要です。アートワークについて素早くいろいろなものを試し、修正を重ねていけることが、予算内で納期通りに、成功につながる品質の最終製品を完成させるための鍵となります。
しかし、チーム内にコンセプトアーティストが何人もいる場合は問題ないかもしれませんが、アート部門の体制が充実していない状態で、このように迅速でクリエイティブなプロトタイピングをやりたいと思ってもこれは困難なことです。解決策はないのでしょうか...あります!ArtEngine の Style Transfer ノードを使うのです。
Style Transfer の使い方は、オリジナルのテクスチャと欲しいスタイルを表現する画像をインポートして、Style Transfer ノードのそれぞれ対応する入力に接続するだけです。スタイルを表現する画像は、自分で描いたドローイングやペインティング、あるいはオンラインで見つけた「これいい!」と思った画像など、何でも構いません。
好みに合わせて設定を調整します。そして実行すると、まったく新しい画像ができあがります。この画像をムードボードに追加したり、Unity のプロジェクトに直接エクスポートしたりすることができます。詳しくは、冒頭でご紹介したデモ動画をご覧ください。結果は下の画像のようになります。
注意:この機能は現在ベータ版としてテストされています。今後数か月の間に皆様に正式版としてご提供する予定です。
AI によるアニメーションパイプラインやクリエイティブワークフローの高速化を体験してみたい方は、ぜひ ArtEngine をお試しください。5 月 17 日までに ArtEngine をご購入いただくと、月額 2,299 円(税込)(通常は月額 12,540 円(税込))でご利用いただけます。ご意見やご質問がございましたら、artengine-info@unity3d.com までご連絡いただくか、Discord チャンネルまでおいでください。
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