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サンプルベースのワークフローで創造性を加速、強化する

2020年4月27日 カテゴリ: テクノロジー | 7 分 で読めます
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ある業界において、急激で真に破壊的な進歩が起こると不安定性が生まれます。そして、システムとして不安定であるが故に長続きしません。このような例は至る所で目にしますが、CG 業界において、このようなことが何を意味するのか、そしてどのように発生しているのかということを考えることはほとんどありません。

なぜサンプルベースのワークフローなのか

コンピューターグラフィックスは急速に進歩しており、それは需給市場に不安定性を引き起こしています。3D コンテンツへの需要と消費は、私たちの生産能力をはるかに上回っています。この不均衡にまつわる多くの兆候が見られます。チームの規模が指数関数的に大きくなっていること、プロジェクトの予算と期間が膨らんでいること、分散したチームやアウトソーシングへの依存などです。これらの事象が、業界の基盤に亀裂を生じさせています。

ゲーム開発のコストは指数関数的に上昇している。

そこで私たちは、コンテンツ制作における新しいパラダイムや考え方の転換と同時に、技術スタックの転換、すなわち、サンプルベース(Example-based)のワークフローを提唱しています。

サンプルベースのワークフローとは何か

サンプルベースのワークフローの背後にある哲学は、すべてのピクセルをペイントしたり、プログラミングしたりし続けることはできないということです。サンプルベースのワークフローでは、真っ白なキャンバスから始めて手作業あるいはプロシージャルなワークフローでゼロからすべてを構築するのではなく、スキャン、写真、または前時代的なメディアの古いアセットなど、必要とする物のサンプルから始めます。この何の処理もしていないサンプルから始めて、コンピューターはデータとそのデータをどう処理するかについての高度な命令を要求し、それまで手動で行われていたプロセスを自動化します。

サンプルベースのワークフロー

シンプルに説明するために、サンプルベースのワークフローを構成する 3 つの要素をリストアップしてみました。

  1. 種となるデータ、またはアーティストが作りたいものの例を用意する
  2. 意図を定義する
  3. 自動化する
  4. 必要に応じて、人間によるフィードバックを通じて修正を行い、2 番目の手順に戻る

型破りに聞こえるかもしれませんが、業界ではすでにサンプルベースのワークフローが使われています。ニッチなユースケースではありますが、2D 写真をテクスチャ付きの 3D モデルに変換するフォトグラメトリは、データを活用して 3D モデリングプロセスを自動化するという点で、サンプルベースのコンテンツ制作が起こした最初の波と考えることができます。Unity は、AI-Assisted Artistry(AI を活用したアート制作)が次に来る波と見ています。

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Unity がフォトグラメトリと、それがどのようにプラットフォームに適合するかを検討し始めたとき、このプロジェクトにあたるチームは、使える時間も限られた小さなチームでした。そのため、可能な限り効率的な方法を採用する必要があり、手当たり次第に物事を試すという方針は採れませんでした。ほとんどのスタジオは、スキャニングを非常に写実的なコンテンツを迅速に作成するための手段と考えています。 スタジオは、スキャニング機器や RealityCapture などの関連ソフトウェアに投資しています。しかし、フォトグラメトリは完全なターンキーソリューションではありません。生のスキャンから製品に使えるアセットにするためには、手動でのクリーンアップや微調整が必要なためです。そこで Unity は、別のソリューションの開発や模索をしなければなりませんでした。Unity のテクニカルアーティストである Cyril Jover は、フォトグラメトリスキャン専用に設計された業界でもトップクラスの性能を誇る Delighting ツールを作成しました。この取り組みの一環として、チームは、自動シーム除去と一般的なスキャンのクリーニングプロセスに ArtEngine を採用しました。

Microsoft のテクニカルアーティストである Pete McNally 氏も同様に、小さなチームで現実のような環境を構築するという任務を課せられています。このような制約が、McNally 氏をサンプルベースのワークフローの導入や活用に関する業界のパイオニアに育て上げました。McNally 氏は 80 LEVEL でこのトピックについての考えを次のように詳しく述べました

「マテリアルの継ぎ目を取り除くためのソリューションはすでにいくつかありますが、Artomatix の ArtEngine に匹敵するものを見つけられませんでした。ArtEngine は、継ぎ目を除去するためにプロシージャルなアプローチではなく、サンプルベースのアプローチを使用しており、テクスチャを変異させ、既存のテクスチャからの入力に基づいて新しいテクスチャを作成することもできます。例えば、私は『Сraggy Cliffs』で Artomatix のソフトウェアのこの機能を使いました。」

フォトグラメトリスキャンに対する変異とシーム除去の例(Pete McNally 氏提供)

「私の行った 3D スキャンの中には、ぼやけすぎたテクスチャや、引き延ばされたジオメトリ、穴の開いたジオメトリなど、製品には使えないような問題を抱えたものもあったのですが、ArtEngine はそのようなマテリアルにも新たな命を与えてくれました。ArtEngine は足りないディテールを補ってくれるので、思わず無視したくなるような部分も描けて、新しく実用に耐えるテクスチャを作ることができます。」

つまり、サンプルベースのワークフローとは、コンピューターがサンプルデータに基づいて外挿やアイデア出しを行い、これを受けてアーティストは高度で洗練された創造性を発揮し、またコンピューターには基本的で機械的にできる部分を担当させるということを意味しています。これは、アーティストとツールの完璧な共生であり、互いに補い合う関係です。CG 業界にとって必要な進化というだけではなく、まさに必然的な進化であると言えるでしょう。

どのように機能するのか:高品質化、拡大、変換

クリエイティブな制作を効率化するために、サンプルベースのワークフローを実際にどのように使うのか気になるところでしょう。ワークフローには 6 つの柱があり、3 つはデータ側、3 つは自動化のためのものです。これらの柱それぞれについて掘り下げるとそれだけで 1 本ずつ記事が書けてしまうほどですが、この記事をご覧になっているアーティストの皆さんのほとんどにとって馴染みのない内容と思われますので、現時点で手作業を必要としなくなった 3 つのタスクに焦点を当て、自動化について簡単に触れてみたいと思います。

高品質化する

高品質化に関する機能は、ビジュアルアセットやクリエイティブな資産を改善するのに役立つ、ArtEngine の中で 1 つの大きな機能群を成す機能です。業界では、古くて時代遅れの 3D コンテンツが山のように存在しています。テクスチャの標準的な解像度は、およそ 5 年ごとに 2 倍になっています。同時に、オリジナルのマスターファイルが消滅することもしょっちゅうで、製品に組み込まれ、圧縮されて解像度が下がってしまったアセットだけが残されているということがよくあります。最新のスキャニング技術で作成されたアセットでさえ、ぼやけやノイズによるアーティファクトに悩まされることがあります。高解像度化を行うことで、アセットを取り込んで適切な手法で品質を向上させ、その価値と寿命を延ばすことができます。高品質化に関する ArtEngine の機能の 1 つが高解像度化であり、この機能によれば、マンガ風かリアルな画像かの別によらず、どんな画像やテクスチャでも 2 倍または 4 倍の解像度の向上を実現できます。

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拡大する

コンセプトが世界全体を埋め尽くすまでには、長く、退屈で、大部分が反復的な作業が横たわっています。拡大処理は Artomatix が最初に解決しようとした問題であり、今でも Artomatix にとって中心的な目標の一つです。現在、ArtEngine では多くの拡大機能をサポートしています。シーム除去は、あらゆるテクスチャやマテリアルをタイル状に並べることを可能にします。Content Aware Fill(コンテンツの内容に応じた敷き詰め)は、スキャンで破損した部分や欠落した部分を埋めることができます。Texture Mutation(テクスチャの変異)は、繰り返しを作らずにマテリアルを拡大したり、1 つのサンプルから無限にシームレスなバリエーションを生成したりすることができます。 拡大機能により、現実世界の豊かさと多様性がデジタルの世界にもたらされます。

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変換する

多くの場合、3D コンテンツは目下のタスクに適していないことがあります。コンテンツ自体に何か問題があるわけではありませんが、プロジェクトの他の部分と噛み合わないのです。マテリアルが不適切なアートスタイルで作られていたり、スキャナーのキャリブレーションが不適切なために、ある PBR スキャンが他のスキャンと並べたときに違和感を生じるようになっていたり、原因はさまざまです。3D の世界をまとめることがパズルを組み立てるようなものだとすれば、変換機能は、それらのパズルのピースが箱から出しても合わないときに、アーティストを助けてくれる機能です。布やレンガの壁のような実世界のオブジェクトの多くは「ほぼ規則的なパターン」であり、パターンはあるものの、歪んでいたり、不正確であったりして、タイリングに適したテクスチャになっていません。Pattern Unwarp(パターンの歪み除去)機能は、真のパターンを自動的に検出して歪みを除去し、タイリングできる形に変換してくれます。

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以上、自動化の 3 つの柱、すなわち、将来アーティストがサンプルベースのワークフローで 3D コンテンツを変換するときに使える 3 つの方法を簡単に紹介しました。

Unite Now の ArtEngine セッションに参加する

もっと詳しく知りたい方は、日本時間の 4 月 30 日午前 2 時(4 月 29 日 26 時)から開催される、Artomatix 創業者の Eric Risser 氏と ArtEngine の製品責任者である Ely Loew 氏が ArtEngine のポテンシャルを見せるライブセッションにぜひご参加ください。無料でご視聴いただける 1 時間のオンラインセッションでは、テクスチャの変異、シーム除去、パターンの歪み除去、マテリアル生成、テクスチャの高解像度化、カラーマッチ、JPEG アーティファクト除去、テクスチャ内部への描画など、ArtEngine の機能を使って、サンプルベースのワークフローを最大限に活用する方法を実演します。

 

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2020年4月27日 カテゴリ: テクノロジー | 7 分 で読めます

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