Unity 2023.2 TECH ストリームが公開され、ダウンロード可能になったことを発表でき、嬉しく思います。
Unity 2023.2 TECH ストリームは、2023 年の開発サイクルにおける最新リリースです。ただし、どのリリースが皆さんに適しているかを簡単に把握できるようにするために、このリリースの後に変更を予定しています。
Unite 2023 基調講演で発表したとおり、Unity 2023 LTS を Unity 6 に変更することで、元のリリース名のように分かりやすくします。つまり、7 月にリリースされた 2023.1 から LTS までの 2023 年のすべてのリリースが、新しい Unity 6 になります。
この変更により、今後のリリースは Unity 6 の命名規則に移行されることになりますが、この 2023.2 TECH ストリームでは、皆さんが分かりやすいように名前を変更していません。いつものように、Unity の TECH ストリームのリリースは次のメジャーリリースまで本番環境で完全にサポートされるため、Unity エンジンでこれらの素晴らしい追加機能を安心してご使用いただけます。
Unity 6 の他の機能については、Unite 2023 の製品ロードマップセッションをご覧ください。このセッションでは、私たちがグラフィック関連のパフォーマンスの向上、マルチプレイヤーワークフローの加速、動的な AI 機能、モバイルプラットフォームや最新の XR プラットフォームでのウェブプラットフォームのサポートなどの実現に重点を置いていることを説明しています。
このリリースのハイライトを引き続きお読みください。詳細については、リリースノートの全文をご参照ください。今後も皆さんと協力しながら最高の Unity エディター体験をお届けするためにも、フィードバックをぜひお寄せください。
2023.2 では、クロスプラットフォームのライティングパフォーマンス、HD レンダーパイプライン(High Definition Render Pipeline、HDRP)の大気機能、VFX Graph のアーティストワークフローなどが改善されたため、プロジェクトの品質とリアルさが向上します。
Adaptive Probe Volumes(APV)が大幅にアップグレードされ、特にモバイルデバイス上のユニバーサルレンダーパイプライン(URP)のイテレーション時間とランタイムパフォーマンスが向上しました。HDRP ライトプローブデータのディスクからのストリーミングが導入されたことで、ランタイム体験がよりスムーズになり、大規模なシーンのプローブデータをすべて格納するように CPU プールが最適化されます。
これまでは、APV はピクセル単位の品質の間接光のみに対応していましたが、広範なモバイルデバイスには適さない可能性があります。ランタイム時に APV のパフォーマンスが許容されるレベルを下回る可能性があるためです。APV に頂点単位の品質設定を使用すれば、ライトプローブの間接光の品質レベルを決定できます。これにより、モバイルデバイス上でライトプローブのライティング環境を効率的に実行できるようになります。
GPU ライトマッパーの製品版リリースはゲームチェンジャーであり、CPU ライトマッパーの機能を上回る、ライトマップとプローブの超高速ベイクを実現します。GPU ライトマッパーは CPU ライトマッパーと比較してライティングデータの処理時間を半分以下に短縮でき、大きなシーンや高解像度のライトマップテクスチャに最適です。
さらに、静的なグローバルイルミネーション(GI)を使用している場合は、これまでの「自動生成」機能の代わりに新しいインタラクティブプレビュー機能を使用して、ベイクしたライティングデータのオーサリングやトラブルシューティングを簡単に行うことができます。
ライトプローブを含むモジュラーコンテンツを構築するときに、ライトプローブの位置が読み取り専用ではなくなりました。このリリースで、プローブをベイクした後にライトプローブの位置を変更できる API を提供しています。
HDRP のビジュアル体験が拡張されました。HDRP Night Sky で時刻の遷移がサポートされるようになったため、星や月などの天体を統合してより没入感のあるシーンを実現できます。ボリュメトリッククラウドもシャドウマップの向上によってビジュアル品質が大幅に改善されたため、よりリアルで視覚に訴えるセルフシャドウイング効果を演出できます。
SpeedTree のビジュアル品質が HDRP で向上し、新しい透過マスクを利用して葉のみにサブサーフェススキャタリングを適用できるようになりました。樹皮や小枝を透過する意図せぬライトを除去したり、3D ジオメトリのライティングと一致しない過度に明るいビルボードのライティングを修正したりできるようになりました。
デカールの改善に伴い、パストレーサーとの互換性も改善されました。シェーダーグラフベースのデカールは透明なオブジェクトに影響を与えることができるため、雨粒、波紋、カスタム彫刻、ガラスの汚れなどのプロシージャルエフェクトを作成できます。
2022 LTS では HDRP に VFX Graph の 6 ウェイライティングが導入されましたが、このたび URP でも利用できるようになりました。これらのツールを使用すると、ライトマップをベイクし、ランタイム時にスプライトシートでライティングをシミュレートできるため、煙、雲、蒸気など、さまざまなライティング条件で機能するカスタマイズ可能な効果を作成できます。
VFX Graph のモーションベクトルと URP のオブジェクトモーションブラーが同時にサポートされるようになったことで、アーティストはカメラの露出時間よりも速く移動するオブジェクトにブラーをかけることができるようになりました。これにより、Temporal Anti-Aliasing などのシステムとシームレスに統合された素晴らしいビジュアルエフェクトを演出できます。
VFX Graph の新しいテンプレートとウィザードでは、定義済みの効果が提供されるテンプレートウィンドウにアクセスできます。このウィンドウを起点にして、独自の効果を簡単に作り出すことができます。
さらに、より経験豊富な VFX アーティストと開発者のために、Custom HLSL Block が追加されました。この追加により VFX Graph の可能性が広がり、(近傍探索を通じて)群れのような効果を加えたり、バッファから読み出してオーディオをトリガーしたりできるようになりました。
シェーダーグラフの更新に伴い、UGUI 用のシェーダーグラフも更新されたため、パフォーマンスとメモリのコストを削減しながら、無限のアニメーションエフェクトを作成し、UI の動作と外観を調整できます。
複数のプラットフォームにわたってビジュアルが新たに改善されたため、ゲーマーが切望するグラフィックに富んだ体験が向上されると同時に、Android デバイスの安定性向上によってモバイルゲーム全体が改善されました。
クロスプラットフォームのハイダイナミックレンジ(HDR)ディスプレイサポートが始まり、自然なライティング条件に近い、さまざまな輝度差の画像を再現できるようになりました。HDR 出力では、リニアライティングのレンダリングとデバイスに表示される HDR 画像のコントラストと品質の維持が向上されました。Unity エディターとスタンドアロンプレイヤーでは、すべてのレンダリングパイプラインと、モバイルや XR を含むすべての対応プラットフォームで、完全な HDR トーンマッピングと HDR ディスプレイサポートも提供されるようになりました。
DXR1.1 対応の Windows プラットフォーム、Xbox Series X|S、および Playstation®5 にターゲットを絞った場合にラスタライゼーションやコンピュートシェーダーで利用できるインラインレイトレーシングを使用して、ハードウェアアクセラレーションによる見事なレイトレーシングエフェクトとシミュレーションを作り出すことができます。バインドされたレイトレーシング加速構造を走査して交差テストを実行するために、シェーダー内からレイクエリを発行できるようになりました。
Google とのパートナーシップにより、Android でのインストールとランタイム体験が改善されてダウンロードサイズを削減できるようになり、ゲーム全体の安定性に影響を与える問題に対する貴重なインサイトも提供できるようになりました。
Play Asset Delivery と Texture Compression Format Targeting が、推奨される Unity アセット管理ソリューションである Addressables に追加されました。Android 向けの新しい Addressable パッケージでは、新規または既存の Addressables 設定を使用して、Play Asset Delivery の動的な配信オプションのメリットを享受できます。これを Texture Compression Target Formatting と組み合わせると、プレイヤーは自分のデバイス向けにカスタマイズされたテクスチャを、より小さい初期インストールサイズで入手できます。新しいパッケージの詳細については、こちらを参照してください。
アプリケーションの終了理由へのアクセスを提供する多数の新しい C# API を統合できるようになりました。これらのインサイトは、クラッシュや ANR(Application Not Responding)イベントが発生した場合にユーザーメッセージを微調整したり、Analytics に送信したり、さらにはゲームの起動方法を作り変えたりするのに役立ちます。詳細については、ドキュメントを参照してください。
Unity は、2022 LTS、2023.1、および 2023.2 に Meta Quest 3 のサポートを追加しました。これにより、以前の Quest デバイスで利用していた使い慣れたワークフローを使用して、VR ゲームを作成できます。さらに、AR Foundation を利用して Quest 3 での魅力的な混合現実体験を作り出したり、強化されたパススルーを利用してデジタルコンテンツと物理的な世界をシームレスにブレンドしたりできます。
混合現実、仮想現実、モバイル AR 用の新しいプロジェクトテンプレートを使ってみましょう。これらのテンプレートは、OpenXR、Meta Quest、Windows Mixed Reality、および ARKit や ARCore に対応するデバイス向けの構築とデプロイに役立ちます。AR Foundation と XR Interaction Toolkit(XRI)を使用したサンプルシーンで基本を学び、ワールドトラッキング、入力、インタラクションなどの機能を実演してみてください。Unity Hub からテンプレートをダウンロードし、ドキュメントで詳細をご確認ください。
より素晴らしいインタラクティブな体験を作り出すために、XRI では今後も多数の更新が行われます。Unity は、複数のビジュアルの向上によってレイベースのインタラクションを更新することで、オブジェクトをつかむ精度を向上させました。よりインタラクティブなクロスプラットフォームゲームを構築できるようにするために、視線によってオブジェクトをターゲットにする、コントローラで手を入れ替える、手首にスポーンメニューを表示するといった視線と手の機能を新たに追加しました。また、より柔軟なクライミング機能を構築できるようにするために、クライミングベースのインタラクションも更新しました。
これらは重要な更新のほんの一部にすぎません。XRI 2.4 と XRI 2.5 の新機能について詳しくは、ドキュメントを参照してください。
WebGL がサポートされるようになり、Unity Gaming Services の Relay との統合も簡素化されるなど、 Unity Transport がさらに改善されました。この更新により、ネットワーク状態をシミュレートする新しいネットワークシミュレーションツールも Netcode for GameObject に導入されました。
UI Toolkit の最新の更新では、データを UI 要素に接続する際の容易性と柔軟性が向上されているため、エディターとランタイムの両方の環境で UI の開発プロセスが合理化されます。新しいランタイムバインディング機能は、UI Builder を使用して設定することも、包括的な API を使用して C# コードで直接設定することもできるようになりました。さらに、UXML のシリアル化と属性の導入により、カスタムの UI 要素を素早く作成できるようになりました。C# 属性を利用し、UI Builder 内にカスタムプロパティドロワーを統合すれば、反復的なコーディングの必要性が低減されます。
UI Builder 自体は、スタイルプロパティのソースを明らかにする新機能が追加され、キャンバス操作が高速になり、UXML オブジェクトオーサリングがサポートされるようになるなど、機能が大幅に強化されました。強化された機能には、複数列の TreeView や ListView などの複雑な UI コンポーネントを編集する機能も含まれます。また、UI Toolkit に ToggleButtonGroup や TabView などの新しいコントロールが追加されたほか、ボタンでのアイコンのサポート、ListView や TreeView 要素をカスタマイズできるオプションなど、既存のウィジェットも改善されています。
Unity のシーンビューがアップグレードされてコンテキストメニューが新しくなりました。右クリックまたはキーボードのショートカットでアクセスできるコンテキストメニューは、UI Toolkit を使用して作成され、C# で拡張できます。このメニューからよく使用するコマンドに素早くアクセスでき、新しいツール開発に合わせてメニューをカスタマイズできます。スプライン機能も改善されました。スプラインオブジェクトに新しいデータストレージオプションが追加され、Inspector のポイント編集インターフェースが改良されています。ここでもシーンビューのコンテキストメニューを利用できるため、スプラインを操作する際の効率性が向上されます。
このリリースでは、Audio Random Container(ARC)が導入されました。オーディオワークフローを向上するように設計されている ARC は、無作為に抽出したオーディオ要素を Unity 内のさまざまなアプリケーションに提供します。 この追加機能は、コーディングなしでより動的で没入感のあるオーディオ体験を作り出すための重要な一歩となります。アセットレベルで利用できるようになった ARC には、一般的な環境雑音、衝撃音、ダイアログクリップなど、無作為に抽出された効果音を設定できる機能が用意されています。これらの効果音は、スクリプトで設定するのではなく、必要に応じてトリガーできます。
Unity プロファイラーで新しい Highlights モジュールを使用できるようになりました。このモジュールは CPU/GPU のボトルネックを迅速に特定するのに役立つため、ここを起点にしてパフォーマンスの最適化を開始できます。2023.2 では、このモジュールはデフォルトで有効化されていないため、「Profiler」ウィンドウを開き、「Profiler Modules」ドロップダウンメニューを選択し、「Highlights」機能をオンにしてから使用する必要があります。
Unity 2023.2 TECH ストリームの詳細をお知りになりたい方は、包括的な機能一覧についてはリリースノートを、使用方法については Unity マニュアルを参照してください。ご利用になる前に、TECH ストリームの各リリースは、次のリリースまで毎週のアップデートによりサポートされますが、新機能の長期的なサポートは保証されないことをご理解ください。
また、新しいバージョンにアップグレードする前に、必ず作業のバックアップを取ることを忘れないでください。Unity の提供しているアップグレードガイドをご参照ください。本番環境のプロジェクトでは、安定性とサポートを向上させるために Unity 2022 LTS を使用することをお勧めします。
TECH ストリームの各リリースでは、新機能をいち早く利用し、フィードバックを通じて将来の技術開発に参加する機会が提供されます。皆さんご自身と皆さんのプロジェクトを最大限サポートできるよう、ご意見、ご感想、ご要望をお伺いしたいと考えています。フォーラムで Unity の現状についてのご意見をお伝えいただく、または Unity プラットフォームのロードマップより、製品チームに直接フィードバックをお伝えくださいますよう、お願いいたします。
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