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『アンブレラ・アカデミー』、Cinecode、そしてプレビジュアライゼーションの(超)強大な力

2022年12月5日 カテゴリ: Industry | 16 分 で読めます
The Umbrella Academy, Cinecode, and the (super)powers of previsualization | Hero image
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マイ・ケミカル・ロマンスのリードボーカル、ジェラルド・ウェイの Dark Horse レーベルのグラフィックノベルを原作とする『アンブレラ・アカデミー』は、2019 年 2 月に Netflix でリリースされました。VFX ファンにはたまらない映像作品であり、第 2 シーズンは配信開始時にストリーミングでの視聴回数ランキングで 1 位を獲得しました。

素晴らしいビジュアルエフェクトには、超然とした何かが宿っています。プレビジュアライゼーション(プレビズ)は、さまざまなチームをまとめ、番組の複雑なシーンをマッピングし、説得力のある物語を提供する上で最も重要なことでした。さらに、素早い制作上の意思決定をすることで、納期に間に合わせることが可能になります。

Andrea Aniceto-Chavez 氏と、『テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく』、『海賊になった貴族』、『NCIS: LA~極秘潜入捜査班』などの作品を手掛けた DigitalFilm Tree のロサンゼルス拠点のバーチャル制作部門 Cinecode にいる彼女のチームが、この舞台裏のプロセスをリードしました。

「プレビズは、それを活用するあらゆる部門の中にあるあらゆるものを定義するのに役立ちます。」

バーチャルプロダクションの仕事をするようになったきっかけは何ですか。

この業界で働き始めて約 4 年になります。私はニューヨーク大学で映画とテレビについて学び、同時にビジネスも専攻しました。この頃、ポストプロダクションにとても興味を持ちました。

映画やテレビの世界については、そこですでに多くのことをやっていたので、理解できました。また VR ゲームの開発に携わったことで、ゲームエンジンアーティストとしての経験も積んでいました。DigitalFilm Tree の CEO である Ramy Katrib から、バーチャルプロダクション部門の立ち上げを依頼されたとき、私はこれらの経験を組み合わせることができました。やがてプロデューサーとなり、今では自分のチームを率いています。

DigitalFilm Tree、Cinecode、そしてあなたが専門とする仕事について教えてください。

Cinecode は、VFX、カラー、エディトリアル、ラッシュ、リモートかつセキュアなクラウドベースのソリューションを専門とするポストプロダクション会社、DigitalFilm Tree のバーチャルプロダクション部門です。映画やテレビのためのプレビジュアライゼーションを行っています。

私たちは Unity などのゲームエンジン技術を活用して、ショット、シーン、スタントワーク、ブロッキング、ロケーション、環境構築などの計画を行っています。これは、クライアントの時間やコストの節約、および二酸化炭素排出量の削減にもつながるんです。DigitalFilm Tree は、『アンブレラ・アカデミー』シーズン 1 の VFX を担当し、シーズン 2 のプレビスの話が出るとすぐに仕事に取り掛かりました。

プレビスに対する最初の要求は何だったのでしょうか。

彼ら(『アンブレラ・アカデミー』のプロデューサーたち)は最初、彼らの描いたシーズン 2 の中心テーマ、JFK 暗殺にプレビスを使おうとしました。これにはディーリー・プラザが舞台となる他のすべてのエピソードのシーンも含まれています。

彼らの一番の悩みは時間でした。彼らは 1 週間分のロケを予定していましたが、ディーリー・プラザを使えるのは 2 日間だけだということが分かったんです。私たちが目指したのは、そのような状況でも、その場所での物語を伝えられると示すことでした。

プレビズでは、アクションのブロッキングを行い、チームと一緒にショットを作成しました。撮影現場では優先順位の高いものだけを撮影し、あとは時間に取り組むものを決めて取り組めばよいのです。

「Unity のプレビズでやったことの 9 割は、実際の映像にも活かされたということでした。そうでない 1 割は、時間がなくて他の撮影を優先させただけということです。」

時間の短縮は、プレビスの最も有益な要素だと言えますか。

時間の節約は、皆さんがパッと考えるよりもずっと複雑です。プレビスを行うことで、制作中の撮影方法や、物事がうまく行くかどうかをかなり先に決められるので、プレビズは重要です。

例えば、撮影スタッフは、使いたいクレーンがそのスペースに収まるかどうか、実際に撮影に入る前に確認することができます。Unity の中で、空間のサンプルやデジタルのクレーンを見せることができるんです。また監督は、俳優を使って行う撮影やディレクションが、思い描くストーリーを伝えるのに十分な説得力があるかどうかを確認することができます。プレビズは、それを活用するあらゆる部門の中にあるあらゆるものを定義するのに役立ちます。

プレビスは、従来のストーリーボードに取って代わると思いますか。

そういう見方をされることもありますが、やはりチームが何を考えているのかを理解する上で、ストーリーボードを作ることはとても重要だと思います。コンセプトアートは、テクスチャやライティングなど、実際にどのような環境になるのかを教えてくれるものです。 

そのイメージをプレビズで具現化し、チームのクリエイティブなビジョンがどのように現れるかを示すことができるのです。これには、動きやカメラの速さといった要素も含まれます。

プレビズで見せたものが実際に撮影されることは、どの程度あるのでしょうか。

アンブレラ・アカデミー』の第 2 シーズンが公開される前に撮影スタッフに話を聞いたところ、その時私たちはまだ最終的な映像を見ていなかったのですが、Unity のプレビズでやったことの 9 割は、実際の映像にも活かされたということでした。そうでない 1 割は、時間がなくて他の撮影を優先させただけということです。

『アンブレラ・アカデミー』エピソード 301:Unity でのプレビズと完成版の映像を並べたもの(映像提供:Cinecode、DigitalFilm Tree)

なぜ、プレビスの内容を忠実に再現することが重要なのでしょうか。

リアルタイム性を利用することで、1 つのシーケンスに対して数多くのバージョンを作成することができます。その場でシーケンスを示すことができるので、その場で調整することも可能です。

アンブレラ・アカデミー』のエピソード 310 では、俳優たちがホテル・オブシディアンにいて、その周りが崩れていく様子が描かれています。プレビズでは、その VFX を作成し、ホテルが崩れていくとどのように変化するかを目で見られるように取り計らいました。そして、プレビズで行ったことを制作チームが本番に応用し、同じ紋の上に役者を立たせたのです。

そういうシーンでは、いろいろな部署と連携するんです。美術部、スタントコーディネーター、そして監督や撮影スタッフなどとです。

『アンブレラ・アカデミー』エピソード 301(映像提供:Cinecode、DigitalFilm Tree)

バーチャルプロダクションによって、例えば監督との仕事の進め方など、現場のダイナミクスに変化はありましたか。

私は現場に出ることはありませんが、監督や他の制作責任者と一緒に仕事をすることがあります。監督や DP(撮影監督)がバーチャルプロダクションの仕組みを理解すると、彼らが脚本を読んだり、従来のストーリーボードを描くだけでは得られなかったアイデアを生み出すことがよくあります。結局、彼らは私たちと一緒になって、ライブでアイデアを練っているのです。

監督は、ブロッキングした後のシーケンスを見て、そのシーケンスのためのカメラを作ることができます。同じシーケンスを撮影したり、それを複製したり、別のレンズで別のショットを作ったり、レンズを切り替えたりすることは簡単にできます。監督が現場でやるようなことを、バーチャルでやることができるということです。

そして、これは『アンブレラ・アカデミー』で行われたことなのでしょうか。

ショーランナーの Steve Blackman やプロダクションデザイナーと打ち合わせをして、各部屋の用途を決めていくんです。監督の Jeremy Webb は、Zoom でそのシーンの何種類ものバージョンに対して指示を出します。それぞれのテイクを確認し、制作チームが最適な選択肢を決定するのです。

撮影スタッフの Neville Kidd と Craig Wrobleski は、Jeremy が指示した後、すぐにショットを作っていました。これは、まるで撮影現場にいるような感覚でした。

そして、このやり方によって、時間があればチームメンバーがいつでもセッションに参加できる機会ができました。実際に撮影する前に、最も説得力のあるストーリーを考え、変更し、編集することができたのです。

作って、収録して、レンダリングを出力。『アンブレラ・アカデミー』の VFX スーパーバイザーが Unity で VR を使ったショットを作成している(映像提供:Cinecode、DigitalFilm Tree)

プレビスは、制作ワークフロー全体に大きなメリットをもたらすようですね。

みんながメリットを享受します。全部門にこれを活用させるような制作をいつもしているわけではありませんが、大抵は時間が足りないからそうなるのです。ショーランナー、ディレクター、撮影スタッフ、スタントコーディネーター、VFX、美術部門...それぞれの立場でプレビスを使用する理由があり、撮影現場のボトルネック解消に役立っていることを、私たちは実際に目の当たりにしています。

また、カメラ部門にとっても、事前に撮影を行い、必要なレンズや機材を確認することができるため、メリットがあります。また、繰り返しになりますが、リモートワークによって、多くの時間とお金を節約し、二酸化炭素排出量を削減することができます。

プレビスが現場で最終版のショットを撮る際にどのように役立ったか、具体的な例を挙げていただけますか。

エピソード 306 では、チームがフレームレートが十分に出るかを確認したいということで、Phantom カメラを使用しました。プレビズで撮影した 500fps とそれ以外のフレームレートを切り替えて、ジェイミー(カジー・デイビッド)が壁に向かって唾を吐くシーンのように、シーケンス全体でフレームレートを変化させるのです。

Unity でこのようなショットを書き出し、さまざまなフレームレートでテストできたのは、本当にクールでした。そうすると、監督はすべての選択肢の中から、どれがベストな撮影方法なのかを判断することができます。毎回結果が見えないまま撮影現場で長い時間をかけて考えていたのとは違います。

つばを飛ばす:エピソード 306 の プレビス(映像提供:Cinecode、DigitalFilm Tree)

プレビズや撮影前の判断に、Unity がどのように役立ったのでしょうか。

先ほども触れましたが、ディーリー・プラザでのシーンが多く、実際の場所の高さや寸法を正確に再現した LiDAR スキャンを用意しました。

それをすぐに Unity に取り込むことができたので、撮影スペースを確保する場所や、スタントを行う場所などを決めることができました。また、プロダクションデザイナーがいれば、例えばセットの一部が取り外せない場合など、教えてもらうことができます。

他のプロジェクトでも Unity を使っているのですか。

最近、『Miracle Workers』シリーズで Unity を使用しました。ナプキンの裏に描いた絵が、プレビスのための完全な 3D セットになったのです!

チームは中世の風景をどのように表現するかを描いていたのですが、そのスケッチが描かれたこのナプキンを私たちにくれたのです。そこで、それをスキャンして Unity に取り込みました。そして、彼らが探しているアセット(一部は既存のもの)を置いてみたのです。

また、そうして組んだ風景をライトで照らすのも本当に簡単でした。この 3D 環境によって、プラハで撮影するのか、それともロサンゼルスでシーンを構築だけでよいのかについて、より良いアイデアが浮かんだのだそうです。

ナプキンからプレビズに:『Miracle Workers』のプロダクションデザイン(映像提供:Cinecode、DigitalFilm Tree)

アセットを自作しているのですか、それとも Unity Asset Store から入手しているのですか。

Unity を使ったプロジェクトでは、自分たちで機能を作りつつも、既存の機能、アセット、コンポーネントを利用することがあります。例えば、『アンブレラ・アカデミー』のエピソード 303 は VFX が多いので、VFX パーティクルのテクニカルビジュアライゼーションとプランニングをかなりやりましたね。Unity では、アセットストアにパーティクルエフェクトがたくさんあるので、それを使って、チームが実際に爆発をどのように撮影するか、どのような色やトーンを使うか、インスピレーションを得ることができました。

また、Unity を使う時はいつも、Cinemachine、ポストプロセッシング、Asset Store の 3D モデルなどを活用しています。Cinemachine が素晴らしいのは、プロダクションが現場で使っているカメラとすべてのコンポーネントを入力して、可能な限り一致させることができることです。そこから開発者は、各ショットのカメラレポートと、ショット ID、センサーサイズ、レンズ情報、フォーカス対象、焦点距離、カメラの高さなどの情報を持つテキストファイルを作成することができます。

ポストプロセッシングをすることで、ポストプロダクションで予定している番組の編集方法に合わせて、ルックや色調を確立することができます。アセットストアは、ゲームエンジンですぐに使えるキャラクターやパーティクルエフェクトを提供してくれる、素晴らしいリソースです。

火花が散る:Unity で行ったエピソード 303 の VFX プレビス(映像提供:Cinecode、DigitalFilm Tree)

最新のツールや機能にいち早くアクセスできるベータ版プログラム に参加して、Unity が皆さんの次のプロジェクトにどのように貢献できるかを見極めましょう。オーダーメイドのサポートが必要な場合は、私たちのソリューションチームまでご連絡ください。

免責事項:これらのインタビューに含まれる情報および意見は、インタビュイーによるものであり、ここでは情報提供のみを目的として提供されています。Unity およびその関連会社は、不正確な情報、遅延した情報、不完全な情報、およびそれらに依存して行われたいかなる行為についても、一切の責任を負わないものとします。各個人および会社に関する情報は、Unity が確認したものではなく、当該の個人または会社から提供されたものです。
2022年12月5日 カテゴリ: Industry | 16 分 で読めます

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