累計 400 万人が視聴した『The Heretic』の仕事をベースに、受賞歴を持つ Unity のデモチームが、フォトリアリスティックな目、髪、肌などの表現において大きな進歩を遂げた完全新作のシネマティックティーザー 『Enemies』を発表しました。3 月 21 日から 25 日の日程で開催されている Game Developers Conference(GDC)にて、ライブでご覧いただけます。
コンピューターグラフィックスにおいて、本物のようなデジタルヒューマンの作成とレンダリングは最も困難な問題の 1 つです。しかし近年、多くの技術分野で大きな進歩が見られ、開発者たちはその先にある可能性を想像し、非常に興奮しています。デジタルヒューマンをはじめとした各種制作における、クリエイターの高いビジュアル品質とリアリティに対する期待に応えるため、Unity 独自のコア技術は常に進化を続けています。
Unity をリアルなデジタルヒューマンを動かし、レンダリングできる環境にするための準備の一環として、以前 Unity のデモチームは『The Heretic』デモを作り上げ、現在は『Enemies』の制作を通じて、以前のデモで行った仕事の拡張を行っています。
『The Heretic』は、私たちにとって『Enemies』を作り出すための基礎となるステップでした。私たちは多くのことを学び、新しい技術を開発し、さらなる発展の基礎を築き、さまざまなアプローチを試み、相応の失敗もし、その失敗からも学びました。プロジェクトが終了し、その技術を Digital Human パッケージとしてコミュニティに公開しましたが、次にどこでそれを使うか、他に何ができるか、ということについてたくさんのアイデアがありました。ある意味、『Enemies』プロジェクトは、ほぼそれ自体を定義しているようなものでした。
Unity のエンジニアリングチームのロードマップや、実際に行われている開発と密にすり合わせを行いつつ、デモチームは非常に早い段階から関連するすべての新技術を採用しています。また、改善や修正を行って貢献することで、複数のロードマップ間に存在する隙間を埋め、必要に応じて新しい技術の開発も行います。
『Enemies』では、3 つの方向から取り組みました。すなわち、ヘアソリューションを開発すること、顔のリアルさを向上させること、そしてそれらをすべて実際のコンテンツの文脈で行うことです。
つまり、グラフィックスや Unity のコア機能を、新規・進行中・既存の分け隔てなくスムーズな相互運用を含めて最大限に活用し、全体の画質を底上げしているのです。具体的には、『Enemies』は、Unity の HD レンダーパイプライン(HDRP)、スクリーンスペースグローバルイルミネーション(SSGI)、新しい適応プローブボリューム、レイトレーシング、NVIDIA の Deep Learning Super Sampling(DLSS)、その他大小問わず私たちの目的に関連したあらゆる機能セットを使用しています。
民族も顔の特徴も違う人物を選ぶことで、『The Heretic』の Gawain では取り組まなかった、新たな課題に一通り向き合うことになりました。『Enemies』では、40 代の女優を選びました。物語の観点からこの役にぴったりで、技術的にも新たな課題が得られたからです。
そもそも、肌の色が明るいほうが透明感があり、動いたり話したりすると血流が目に見えるようになるので、そうした現象をひきおこす張力を扱う技術を開発したのです。シワはより顕著で、シェーディングやライティングの観点から特に注意が必要です。目に関してもまた独特の課題があり、そのうちいくつかはすでに解決済みでしたが、コースティックを加えることで臨場感を高めました。顔の産毛は肌の陰影を微妙に変化させる重要なものですが、これは Skin Attachment システムを GPU に移行することで実現させました。そして最後に、ロングヘアーをまとわせました。
私たちは、3 つのパーツで構成されたまったく新しい「Unity Hair solution」を開発し、今回のティーザーの主人公の髪の自然な表情と動きを作り出しました。
Hair システム(毛束ベースのヘアシミュレーションを含む)は、髪のオーサリング、スキニング、毛束ベースのシミュレーション、およびレンダリングを行える統合ソリューションです。このシステムは、Alembic 形式のデータを出力するあらゆるオーサリングツールに対応していますので、お好みのツールでグルーミングを作成することができます。『Enemies』では、髪のグルーミング表現に Maya XGen を使用しました。現在、Weta Barbershop でもパイプラインを検証しています。Hair システムは、使用するレンダーパイプラインに応じて、お好みのシェーダーで動作させることができます。HDRP、ユニバーサルレンダーパイプライン(URP)、ビルトインレンダーパイプラインに対応しています。
リアルに見える髪やファーを実現するために、Unity は実写映画やアニメ映画でよく使われるモデル(Marschner / Disney など)に近い、HDRP 向けの Hair シェーディングを開発しました。これにより、どのような光の状態でも、良好なパフォーマンスを得るためにパラメーターを変更する必要がなく、より高度なビジュアルを作り出せるようになりました。
髪のレンダリングは、毛束が非常に細かい場合でも効率的にレンダリングし、また画面上で毛束が小さすぎる場合に、適切にラスタライズが行われないことで発生するエイリアシングの量を削減します。『Enemies』では、マルチサンプルされた可視性バッファーを使用して、非常に細い毛束が引き起こすエイリアシングを減らしています。また、シェーディングは別のシェーディングアトラスで行われ、可視性とシェーディングを分離しています。
これまでのプロジェクトと同様、デモチームは『Enemies』で開発した技術をコミュニティと共有し、皆さんご自身の Unity プロジェクトでお試しいただけるようにする予定です。
1 ~ 2 か月後には、『The Heretic』で公開したバージョンからのアップデートと機能拡張をすべて含んだ Digital Human 2.0 パッケージをリリースする予定です。
また、毛束ベースの Hair システムを含むパッケージを GitHub で公開し、正式サポートされた機能になるまでにフィードバックを収集し、アップデートを行うことができるようにする予定です。これらのパッケージがご利用いただけるようになったときに、Unity のブログやソーシャルメディアでお知らせします。
Unity への改善うち、『Enemies』の制作を通じて実装されたもの、あるいは『Enemies』に直接取り入れられたものは、そのほとんどがすでに Unity 2021.2 に搭載されているか、Unity 2022.1 または 2022.2 に搭載される予定です。
GDC に参加される方は、ぜひ Unity ブースにお立ち寄りいただき、Unity エディターで直接デモをご覧ください。
また、Unity のシニアデベロッパーアドボケイトである Mark Schoennagel がメインとなって開催される、Unity で直接プロジェクトのさまざまな技術的側面を見ていくプレゼンテーションにもぜひご参加ください。
GDC のセッションについては、Unity at GDC 2022 のページで詳しくご紹介しています。
ゲストホストの Cinecom.net と Lars Stranden 氏のアシストを受け、Mark Schoennagel が Twitch でブレイクダウンセッションを担当する予定です。Unity’s new real-time cinematic: Enemies( 3 月 25 日(金)午前 9 時 30 分(日本時間 3 月 26 日(土)午前 1 時 30 分)
今後もプロジェクトの舞台裏に関する追加コンテンツや詳細情報の制作、公開は行っていきます。すべての情報は専用のウェブページ unity.com/ja/enemies に集約されます。
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