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プリレンダリングのその先へ:MARZAムービーパイプライン FOR UNITY

2016年9月6日 カテゴリ: テクノロジー | 4 分 で読めます
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芸術作品のように見える素晴らしいCG映画の製作の現場では、表からは見えない高額な費用や気の遠くなるような膨大な作業が掛けられていることが多くあります。従来のレンダリング手法を用いた場合、プロジェクトの完成までに何ヶ月、何年という月日がかかります。高品質の画像をレンダリングする技術がますます急発展を遂げる一方、制作期間の長期化や高額な機材費用、修正・更新・レビューに掛かる時間の長さ、また最終的な品質が開発後期まで確認できない事など、コスト面における問題はほぼ置き去りになっています。このような状況を打破すべく、より効率的で新しい手法の開拓に乗り出したのは、ソニックなどの魅力溢れるアニメーションや映画『キャプテンハーロック -SPACE PIRATE CAPTAIN HARLOCK-』の制作で知られるアニメーションスタジオ、マーザ・アニメーションプラネット(以下「マーザ」)でした。

ゲーム業界大手セガのグループ企業であるマーザは、ゲームエンジンには慣れ親しんでいたものの、ゲームエンジンが自分たちの問題を解決する手段になるとは考えていませんでした。そこで注目したのがUnity でした。レンダリングの枠を超えてゲーム開発やVRまで幅を広げている Unity の3Dエンジンなら、アニメーションと映画の世界にも拡張できるのではないかと考えたのです。ゲームも映画も、アーティストとデザイナーとエンジニアによって制作されることに変わりはないのだから。マーザは、グラフィックスの品質を落とすことなく新しいCGアニメーションのワークフローを作り出すため、Unity エンジンの導入に踏み切りました。

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「車輪の再発明」は必要ありませんでした:マーザチームは、既存のCG技術を活用し、各開発者が異なるプラットフォームから連携して作業する方法を確立し、そのための根本的な作り変えは行いませんでした。最新のCGに期待されるレベルの表現を達成すべく、Unity とコンポジットソフトウェアとカスタムソリューションの組み合わせによって(今までゲームエンジンではほぼ不可能だった)実写クオリティのキャラクターモーションとシェーダーを実現しました。

その結果生まれた MARZAムービーパイプライン for Unity は、映画制作を効率化するためのプラグインです。このプラグインのおかげで、マーザの開発チーム、エンジニアチーム、プロダクションチームがほぼ同時に作業を進めることが可能になりました。それまでは一つのプロジェクトに大体6~7ヶ月を要していたのが、5ヶ月に短縮(20%~30%の効率化)されました。まさに「ギフト」が生まれたのです。

マーザのチームはこれをほぼ単独で作り上げましたが、最後の仕上げに当たって Unity チームに協力を求めました。Unity のエンジニアはこのチャンスに喜んで共同作業へ参加しました。このパイプラインにおいて最も有用であったものの一つが、Unity の開発によるカスタムの Alembic ImporterFrame Capturer でした。これらは現在ではオープンソース化され、Github で入手可能となっています。Alembic Importer を使用すると、Houdini や Maya などの外部ソフトウェアから複雑なジオメトリデータを Unity に取り込むことができます。Frame Capturer は、キャプチャリングという処理の過程で、EXR画像ファイルのシーケンスをゲームビューから生成できるようにするものです。このシーケンスはその後 Nuke、Fusion、After Effects などでコンポジットを行うことができます。今回のプロジェクトではマーザチームは、これらのツールをさらにカスタマイズし、よりハイレベルなツールを作ることで高品質な表現を実現しています。

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今までどおり標準の Alembic Mesh で作業を行いつつシーン作成やレイアウトの修正を素早く行えるようになったことで、アーティストの作業効率が劇的に向上しました。ボタン一つでシーンの自動レンダリングが可能なので、シーン作成の後でも更新作業や細部のブラッシュアップを行うことができ、従来のようにレンダリングだけに何時間も取られなくて済むようになりました。その結果、マーザのアーティスト達は、全体の制作スケジュールへの影響を心配することなく自分のペースで仕事を進めることが可能になりました。さらにアーティスト以外のメンバーにとっても、開発の早い段階から最終版に近いクオリティのビジュアルを確認できることがメリットとなりました。

Alembic Importer は、映画中のある重要なシーンで決定的な役割を果たしました。映画のヒロインが、画面いっぱいに波打ち形を変える何百万ものプラスチックボールの海に「漕ぎ出す」シーンは、エンジンに膨大なパーティクル負荷が掛かるものでした。Maya とHoudini と Unity によって作成されたこのシーケンスを、まずジオメトリとしてエクスポートしてみたものの失敗に終わりました。ボールを照らす光が綺麗に表現できなかったのです。そこで Alembic Importer ツールをカスタムシェーダーと併用すると、膨大な量のデータが高速処理され、一つ一つのボールに正しく光があたり影がついた状態でスムーズにレンダリングすることができました。その成果は目を見張るほどで、個々に独立した大量のオブジェクトが、それぞれの固有性を保ちながら滑らかに一体となって流れ、調和されたひとつのシーケンスが出来上がっていたのです。これは、Rawデータ処理能力がもたらし得る可能性を示す、ほんの一例に過ぎません。またこのワークフローが、効率性だけでなく表現の質も向上させる可能性を持っていることが分かります。

マーザと Unity のコラボレーションで実装された MARZA ムービーパイプライン は、今年中に利用可能になります。ですがこれはもちろん始まりに過ぎません。このワークフローは、ゲームの世界に影響を与えるだけでなく、デジタルコンテンツのプロジェクトや映画・VRの開発にも簡単に応用できる枠組みを備えています。映画業界の一部の人々が Unity のリアルタイム・レンダリングの可能性をいち早く体験しています。今後もUnityを使った新しい取り組みをお楽しみに!

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2016年9月6日 カテゴリ: テクノロジー | 4 分 で読めます

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