ブレンダン・ギボンス はナラティブデザイナーで、ブレダにあるNHTVの生徒でもあります。彼はその身一つでVRを使った映画撮影にチャレンジし、Oculus Riftで体験可能な VRライブアクション・ショートフィルム「Dyskinetic」 を撮影、Nijnmegenで開催されたGoShort 2014 国際映画祭で作品を発表しました。しかし、この撮影を通して彼が発見したのは解決策よりむしろ新しい問題ばかりで、だからこそ彼は Unite Europe で「参加者の誰かがこの問題を一つでも解決してくれることを願って」その体験と遭遇した問題を発表してくれました。
ブレンダン「VRフィルムの撮影では、やるべきだと分かっていながらも自分では出来ないことが余りにも多く、まったくもって無残な経験だったと言わざるをえません。わたしは映像をまとめるために7つの異なるソフトウェアを使用しました。その中にはファイル名をまとめて変更するための管理ツールや、撮影したビデオをOggフォーマットに変換するソフトなども含まれます。撮影した映像をVRで利用できるフレームに変換するワークフローは特ににヒドくて、もっと良いやり方があるはずです」
ブレンダン「VRはまだ未来のテクノロジーの一角です。すくなくともエンターテインメントコンテンツとしてはそうです。頭に何かを装着すればどこか別のところに行ったように感じられるテクノロジー?そいつが未来じゃなくてなんだってんですか!ただ、私たちはまだ現在のパラダイムの技術を使ってこの未来のコンテンツを創ろうとしています。たとえば私たちは『FPSのゲームをVRに移植するにはどうしたらいいか』とか、VR空間での「実在感(プレゼンス)」ついて議論しています。でも、現在の段階では『VR空間の中に居るように感じられる』というコンセプト、つまり実在感だけをテーマにしたアプリケーションやフィルムを創るのは難しいです。本当のチャレンジというのは、VRでしか体験できないコンテンツをどうやったら作れるかということなんです」
ブレンダンが採った撮影フィルムをUnityに持ち込むためのワークフロー
ポール・ハナーはブレンダンとはまた違った経歴をもつ人ですが、かれもブレンダンと同じく「本物のように感じられる」VRコンテンツを創ろうと挑戦する開発者です。かれはイギリスのニューポートにあるエアバス・ディフェンス・アンド・スペースの主任 3Dシミュレーションエンジニアで、Unite Europeでは 「Heliskape」という Airbus EC135 ヘリコプターでロンドンを飛び回れるVRヘリシミュレーターの開発経験について講演してくれました。
ポール「新しいものに触れ合った時に得られる、特有の不思議な感覚・感動(センスオブワンダー)というものがありますよね。私たちは、どうやったらそれを創り出せるかということを深く考えていました。実在感を創り出すためには、入力システムが重要な役割を果たします。Heliskapeでは実際に手で触れて動かす物理的なコントロールを正しく設計することに注力し、実世界でヘリコプターを運転するときにするような操作を実装しました。たとえば、コントローラーのスロットルを物理的に前に動かすといった操作が、仮想空間に実在感を与えるんです」
彼は講演のなかで、Heliskapeによって椅子に座っていただけの学生が平衡感覚の消失を体験するまでの過程を詳しく話しました。
ポール「彼女はずっと本当に空高く飛んでいるように感じ、その体験に圧倒されていました。まったく素晴らしかったです」
ポール「私たちが本当のVR体験を創れるようになるまで、それほど時間がかかる場所に位置しているとは思いません。VRは現在、他のどんな入力メディアよりも速く進化しています。OculusとValveが開発中の空間を認識能力をもったコントローラーは大きなブレイクスルーになるでしょうね。」
Unite Europeのキーノートの中で、ルーカス・マイヤーはOculus RiftとGear VRの組み込みサポートを含むUnity 5.1の新機能について話しました。そして講演中、VRへの取り組み方は「とにかく新しいアイディアを沢山試して、何が上手く行くかを見てみることだ。Untyはそのための実験には最高の開発環境だ。早く実験し、早く失敗して何百もの可能性の中から、VRで機能するインタラクションや体験のモデルを探し当ててほしい」と語りました。
エアバス社では ポールと彼の開発チームはUnityをプロトタイプのメインツールとして使っています。
ポール「Unityは頭の中にあるアイディアを試して、それが上手くいくかどうかを複数のデバイスで素早く試すのに、すごく役に立ちますね。新しい境地を開拓するためにはとてもいいツールです。」
さらに彼は、Unity 5の特にスタンダードシェーダーとリアルタイム・グローバルイルミネーションが、アーティストのワークフローをさらに効率的にしたと語りました。
ブレンダンはVRフィルムをUnityでまとめましたが、それ自体はとても簡単だったと語っています。
ブレンダン「録画したフィルムをUnity 5のテクスチャとして使うようにし、あとはPrefabをドラッグすればいいだけで、速攻で動作しました」
Dyskinetic の Unity上での編集画面
ポール「シリアスゲームでは、現実世界を模した世界を創る必要があるんです。ゲーム開発者は現実とは違う独自の世界を創ることが多いと思いますが… 私たちのアプローチは他のゲームとは違うところがあるけど、お互いに学べることが多いはずですし、そうすべきだと思います。VRはゲームも、映画も、人々が不動産を購入する方法も、休日の過ごし方でさえ・・・とにかく、VRは全てを変えてしまうんですから」
ブレンダン「VRフィルムは、数々の努力と勉強を必要とします。インタラクティブシアターからは、俳優にどういう位置取りをさせたらいいか学べるでしょう。映画からは、どうショットをフレーム取りするか学ぶ必要があります。さらにゲーム開発からレベルデザインを学ぶ必要があります。たとえば、ライトをどう配置したらいいか、色はどう使うか、フィルムのなかでどう要素をアニメーションさせたら視聴者はそっちを振り向いてくれるか、等々です。とにかく、何もかもから発想を得るべきです!これは全く未開の領域なのですから。私たちは全く新しいストーリーテリングの手法を創っているんです」
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